幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

書籍・雑誌

町田康「しらふで生きる」

酒まみれの生活を送ってきた町田康が突然酒を飲まなくなった。なぜやめたのか、やめられたのか、やめてどうなったのかについて延々と書き連ねた本。 基本酒の話とも言えるが、実際は人はいかにして生きるべきかというような普遍的な内容であり、哲学書、宗教…

「ザ・ロード」

読むのが辛すぎた。二度と読めない。 泣ける本とか映画とかあるが、それでも泣いた後にそれなりに爽快感がある。本書は違う。本当に悲しすぎた。 何らかの大惨事(人間の手によるものと示唆されている)によって死の世界となった地上を彷徨う父と子。 精緻な…

ジョン・ル・カレ「スパイたちの遺産」

スマイリー3部作の続編、ただし38年後に書かれたもので作中の時間も同じくらいの時が過ぎている。 訳者あとがきを読んでから、しまった!と思ったのが本作は当然スマイリー3部作の続編なのだが、それだけでなく「寒い国から帰ってきたスパイ」の後日譚となっ…

ジョン・ル・カレ「スマイリーと仲間たち」

スマイリー3部作(海外ではカーラ・トリロジーとのこと)の完結編。 読みにくさ(細かすぎる、深すぎる、まわりくどい描写など)は相変わらずだけど展開としてはよりハラハラドキドキさせる仕掛けも入って、少しだけどエンターテインメント色が濃くなってる…

ジョン・ル・カレ「スクールボーイ閣下」

スマイリー3部作の2作目。前作よりもさらに登場人物も増えて、上下巻という構成なので読むのに時間かかった。 本作では新聞記者であり工作員でもあるジェリー・ウェスタビーの冒険が描かれいて、前作よりもサスペンス・アクション的な要素は増えている。 た…

ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」

登場人物がたくさん出てきて、かつ、それがファーストネームやファミリーネーム、あるいはニックネームや喩えで書かれたりするので、最初の1/3くらいまでは全く頭に入らず、メモをとりながらそこまで読み直した。 メモを片手に読み進んでようやく登場人物が…

「三体X 観想之宙」

三体の著者によるものではない、続編というかスピンオフ。 著者も好意的に評価していて、協力もしたとか、評判も高かったので期待したのだが、中学生の妄想を読まされた気になってしまい、がっかり。 当時ファンの一人が作った二次創作という目で見ればもち…

「こうしてあなたたちは時間戦争に負ける」

二つの陣営「ガーデン」と「エージェンシー」が時空を超え、多くの時間の流れ(スレッド)の中で長期にわたって戦争を続けていて、どちらも今の人類より遥かに進んだテクノロジーを駆使している。その目的や歴史もほとんど解説されることはない。ただ、それ…

「三体0 球状閃電」

解説によるとこの著者の二作目の長編ということで、三体に比べるとどこかアマチュアっぽいところはある。 ただ、球電の謎に理論構築と実験を繰り返しながら迫っていく過程は、架空のものとはいえSF小説というよりは実際のレポートを読んでいるような気にもな…

町田康「私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?」

先週とうとうコロナになって、幸い症状は軽いものだったので自宅療養しながら「たましいの場所」を読み返したりしていたのだが、この町田康もそうだが、やはりよい文を書く人はよく本を読んでいる。どちらの本でも著者が影響を受けた本がたくさん紹介されて…

「超傑作選 ナンシー関 リターンズ」

確かAmazonでセールになっていた時に買ったまましばらく寝かせていたもの。懐かしい芸能人、TV番組、CMのことがたくさん出てきて、いろいろと思い出しつつ、楽しんで読んだ。 今更ながら得た知識として、杉本哲太が元横浜銀蠅の構成員だったこと。知らなかっ…

危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

漫画版のナウシカを読んだのは2010年ごろで、当時も衝撃的だったし感動して、以来好きな漫画の一つになった。 本書はさまざまな分野の論者が漫画版ナウシカについての考察を行うというもので、それぞれ興味深い内容だった。 新型コロナや戦争、世界情勢の緊…

小泉悠「ウクライナ戦争」

否応なくこの戦争の影響を受けている(もちろんビジネスそのものから、海外出張に行く時の飛行経路まで…)ので、先を読むことは無理としても背景だけは少しでも理解を深められたら、ということで読んだ本。 何か個人として評論できるようなものでもなく、た…

ニール・スティーヴンスン「スノウ・クラッシュ」

本書がメタバースの語源だといっても(本書ではメタヴァース)、ニューロマンサー(1984年)とかHabitat(Wikipediaによれば1985年開発、1990年から日本でサービス開始)とかより後で書かれた作品だろうし、元ネタはそれらの方なのでは?と思っていたので「…

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

読み始めて、「火星の人」の二番煎じだし、文体の軽さとかところどろこに入る薄寒いコメディ要素とか、登場人物が日本のアニメキャラっぽいとか、いろいろと読むのがしんどかった。 最後まで読んで解説をみて、著者が(翻訳も)まさに「火星の人」と同じだっ…

「後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ」

この「意識と自己」と合わせて読むとおもしろそう、と思ったが…。 本書ではいろいろな科学的な実験や理論が紹介はされるものの、ほぼ著者の主観が中心で、それも動物を飼った経験が少ない自分でも知っている(そう思っていた)ことが多かった。 それでも因果…

エルヴェ・ル・テリエ「異常(アノマリー)」

話がどう転ぶのかがわからず、先が気になってほぼ一気に読んだ。 以下、 (かなり詳細な)ネタバレあり まずよかった点はその凝った構成。 全く異なるバックグラウンドや現在の生活を持つ人々の話がバラバラに語られ、最初は普通の小説的な展開。 それらが一…

A.ダマシオ「意識と自己」

グレッグ・イーガンの作品によく出てくる、「移入」。人間の記憶や意識といったものをデジタル化し、肉体を捨てて永遠の命をサイバー空間上で得る(ただナノマシンを使って自由自在に物質化もできる)という世界が実現できるものなのか、すごく関心がある。 …

グレッグ・イーガン「ビット・プレイヤー」

もちろん、話もおもしろいけど、やはり人間が(正確には地球人だけではない)デジタル化された世の中があまりに便利そうで、羨ましい(笑)どこにでも行けるし、眠らなくても良いし…。 そういう生物が、今の我々のような物質としてのみ存在する生物とコンタ…

「THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法」

この手のことをテーマにした研修を受けたり、本を読んだりはしてきたので、あまり目新しいことはない。 時々、こういう本を読んでは、目指すべき姿が間違っていないか、それに向かって正しくやれているかを確認する、ということになる。 事例は、後付け的な…

中島らも「今夜、すべてのバーで」

タイトルからして「頭の中がカユいんだ」みたいな、実体験をもとにしたアルコールに絡む軽いエッセイ的なものを予想していたのだが、読ませる小説で終盤の展開には泣いてしまう。 以下、ネタバレあり。 綾瀬少年の死、医師赤河との殴り合いから、天童寺家の…

藤本隆宏「現場主義の競争戦略」

2010年から2013年にかけての著者の講演録をもとにした「ものづくりの現場の視点から見た日本産業論」。 リーマンショック後の不況・円高、東日本大震災、テレビ産業不振といったその時々の状況から議論されていた「日本製造業への悲観論」に対する著者の主張…

「バカな」と「なるほど」経営成功の決め手!

楠木健氏の「ストーリーとしての競争戦略」や「戦略読書日記」でも紹介されていて、読んでみたかったのだが、当時は廃刊になっていたものが、まさにそういう要望に応える形で復刊されたもの。 タイトルが全てを表しているエッセンス的なものは、そのとおりで…

堺屋太一「組織の盛衰」

前半は特に、組織のそもそもの目的やそれを果たすための構造(共同体組織と機能組織など)やトップ以下の主要ポジション(部門長、参謀、補佐役)と役割、さらに陥りやすい問題点などが、教科書的に整理されていて参考になった。 後半は、本書が発刊された19…

「経営パワーの危機」

時々こういう本を読んでおかないと、目の前のことだけしか見えなくなってしまう。 書いてあることはどれもよくわかるが、重要なのはそれを実現できるか。それも自分がやれるかどうか、ではなくて、組織としてやれるか、やれる組織を作れるか、ということ。 …

「近代ヨーロッパ史」

Amazonのセールで買ったまま忘れてたやつ。 実は世界史をちゃんと勉強したことがないので、時々こういう本が読みたくなる。 分量的に仕方ないが、細かい部分の説明はあっさりと、大まかな流れを捉えるものになっている。 それでも第一次世界大戦に至るまでの…

中島らも「頭の中がカユいんだ」

著者自らが文庫版あとがきで以下のように書いている。 「明るい悩み相談室」のファンの人がこの本を読むと、どういう反応が起こるのだろう。僕にはそれが興味深い。 まさに「明るい悩み相談室」のファンだった自分は、中島らもがこんなに(良い意味で)ぶっ…

小松左京「果しなき流れの果に」

この作品が自分が生まれる前に書かれたもの、ということが最初は衝撃的だったが、読み終わってみるとそんなこととは関係なく、ただただ圧倒されてしまった。 「三体」や「ディアスポラ」と同様、とにかくスケールがでかい。 時空を縦横無尽に駆け巡る展開が…

「ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ」

こんな複雑な目という器官がどうやって進化してきたのか、常々不思議に思っていたので、手に取ったのだが、なぜ人の目がこのようになったのか、というテーマを扱う本だった。 期待とは違ってたが、人が色を識別できる理由、人の二つの目が前向きにこの距離で…

「時間は存在しない」

かなり身構えて読んだのだが、数式はほぼ使われず、思ったよりもやさしかった。 おかげで、「時間」が持つ不思議さや、著者が考えるモデルについては何となく理解できた。 タイトルはセンセーショナルだが、実際には絶対的・広大な宇宙全体に普遍的な時間と…