幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ (文春文庫)原作と映像化作品ということで単純に比較はできないが、「震度0」はこの作品をデフォルメしたもののように思えた。 大事故を前にして、権力や自身の過去の栄光・プライドへの固執をあからさまにした新聞社の管理職たちの争いが繰り広げられる。 それらに正面から挑む悠木の葛藤がよく描かれてあり、一気に読めた。 本作品もまた現実にあった大事故が使われているが、その事故と報道の狭間で悩む悠木だけでなく、これを小説にする著者およびそれを読む我々にも葛藤を生むという点で、意味のあることと思えた。 報道に限らず広く企業活動すべてにおいて、良心だけではなりたたない部分とそれでも良心を失ってはいけない部分がある。悩みつづけることがそれらに関わる人々の責任であり、それができないならそこから離れるしかない。悠木の出した答えは後者であったが、そうでない方も読んでみたいと思う。