自分の中の小さな正義とそれを何層にもとりまくそれぞれの単位での正義。それらがすべて一致していれば何も迷うことはないけれど、そうでないときにどうすべきなのか。
この作品に出てくるほとんどの県警幹部たちは迷うことなく小さい方の正義をとり、そのなりふりかまわない様子はコミカルですらある。
最後に不破の妻によって思いがけない真実が明かされ、ようやく冬木の中に小さな正義への疑問が生まれる。
世間の注目を集めた現実の事件にのっからなくても(幹部たちがしがみつく小さな正義と対峙するものとして阪神大震災が使われてはいるが)、これほど心に突き刺さる物語は作れるのだ。