短編集だが、SFを小道具に人間とは何かという部分に切り込む作品が多くて、楽しめた。
中でも表題の「しあわせの理由」は、人間の感情の不思議さを考えさせられながらも、主人公の身体の状況によって異なる感情の描写が印象的だった。初恋の成就から自身の境遇ゆえにそれを失った後の痛み、ただそれも含めた人間や感情へのポジティブな雰囲気が漂うラストは涙が出るほどだった。
他には、オチがおもしろい「道徳的ウイルス学者」、ハードボイルド風の「チェルノブイリの聖母」やホッとするラストでやはり涙ぐみそうになる「ボーダー・ガード」がよかった。