リーマンショック、世界金融危機を引き起こしたアメリカ金融業界の真相に迫るドキュメンタリー。
これは「強欲な」金融業界を悪者とみる立場での作品で、異なる見方もあることを差し引いても、見応えがあった。
リーマンショックとは、その仕組みがどういうものかをよく理解あるいは直視しないまま、それがもたらす金に群がる組織・人がそれぞれ自分たちの利益を最大化するように動いた結果破滅を招いたもので、どの業界、誰にでも起こり得るものだと感じた。
もちろん、今回の仕組みがもたらす金額があまりに莫大で、そのパワーが政治やアカデミアまで操ってブレーキが効かなくなった点は特殊かもしれないけど。
厳しい質問を次々にぶつけられてながらも、とにかく自分は悪くない、知らなかったという言い逃れに汲々とする、責任ある立場の人々の姿はあまりに虚しい。
思い出したのが、2000年ごろに読んだはずだけど、なぜか過去のブログを探しても見つからなかった、この「金融工学、こんなに面白い」。リーマンショックの前に書かれた本書をあらためて読み返した。
リーマンショックは、本書で繰り返し説明されている「金融工学は錬金術ではない」ことを示す事例の一つなのだと言えるし、本来金融工学の進化は、有意義だがリスクの高い事業に資金を提供する力になるものという説明にも納得できる。
結局のところ、どんな技術もその使い方次第である、とこれもまた言い古された教訓の事例でもある。
AIがものすごいスピードで進化しつつある状況の先に、こういう事例がまた積み上げられていくのだろうとは思う。