幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

中島らも「頭の中がカユいんだ」

著者自らが文庫版あとがきで以下のように書いている。

「明るい悩み相談室」のファンの人がこの本を読むと、どういう反応が起こるのだろう。僕にはそれが興味深い。

まさに「明るい悩み相談室」のファンだった自分は、中島らもがこんなに(良い意味で)ぶっ壊れた人だとは知らず、あらためて52歳での死はもったいないと思った。ただその死に方も、本書を読むと予見されたものではあるけど…。

アルコールと睡眠薬でラリリながら実質的には4-5日で書かれたという本書は疾走感あふれる、詩のような文がたくさんあって、以下は特に好きなもの。

実際、街にいれば、十円あれば生き抜くこともできる。友人がいれば友人を呼べばいいし、死にかけてる気がしたら救急車を呼べばいい。十円玉さえあればこのかったるい身と心を明日の岸まで辿りつかせることができる。犯罪をするか地ベタで寝るか、どちらを選ぶかのふんぎりを十円玉の表裏が決めてくれる。右へ行くのか、左へ行くのか、それも十円玉が決めてくれる。深夜の交差点でイルミネーションの赤や青に全身を染めあげられて呆然と立ちつくしているときに、それ以外にどんな方法があるのだろう。信号が青に変われば僕たちは歩きださねばならない。右か左か、どちらかへ。