幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

沈まぬ太陽

夢中になって一気に読んでしまった。おもしろかったと思った反面、どう受け止めたらよいかちょっと悩んだ。かなりの部分が事実に基づいている一方で、小説としての脚色もあり、特にそういう部分が素直に読めなかった。

たとえば、御巣鷹山の墜落事故などは新聞・TVでみてよく知っていただけに、改めてその事実の重さに圧倒されながらも悲劇の本を読むように涙している自分が嫌だったし、悪として描かれている人たちの行動・言動があまりにステレオタイプなのも逆にリアリティがないように感じてしまった。

また自分の信念を曲げない主人公恩地にとって本当に大事なものは何だったのだろうと疑問に感じるところもあった。首相の靖国参拝のことでも書いたけど、結局は会社でも従業員でも、乗客でも家族でもなく自分の信念を貫くことだけが大事だったのだろうか。自分の信念を貫くことによって、本来会社や従業員、乗客に対してもっとできたであろうはずのことをしないまますごしたことになったのでは?と感じた。この信念を持ちながら大きな力をもてる立場へ進んで、責任を果たすという選択肢はなかったのだろうか?

あれこれ考えさせられた本だった。