iPhoneの開発ストーリー的なもの、特にその商品コンセプトはどこから(もちろん
スマートフォンというコンセプト自体は相当前から多くあったことはわかった上で)来たのかには興味がある。
「ス
ティーブ・・
ジョブズ」(今、このブログに感想を上げていないことに気がついた)では
ジョブズの視点から
ROKRの失敗から携帯電話を自分たちでやろうと決めたというきっかけが書かれ、
「ジョナサン・アイブ」ではその前にIDgにマルチタッチ技術が紹介されたところまで遡っている。
そして本書ではさらにその前、ENRIという実験プロジェクトがマウスとキーボードに代わる入力テク
ノロジーを模索していて、偶然フィンガーワークス社の
トラックパッドに出会うところまで遡れる。フィンガーワークスが目指していたもの、またENRIチームを始めとする
iPhone開発の重要人物たちのバックグラウンドなどが描かれていて、ピースが埋まっていくようで面白かった。
ただ、それらのエピソードを、
Appleの秘密主義の壁を乗り越えて元従業員たちから集めたとしても1冊の本にするほどの分量にはならず、
iPhone(というより
スマホ全般だと思うが)を構成する素材や技術を遡り、また廃棄された
iPhoneの行き先などについても取材をしている。
正直これらはオマケでページを埋めるためだけのものかと思っていたが、こちらも
Foxconnの工場の様子など予想以上に興味深い内容だった。
他、
iPhoneのインタフェースが映画「マイノリティ・レポート」からかなり影響を受けていたこと、手ぶれ補正技術は
Panasonicのブレンビー(懐かしい!)の頃開発されたものが今の標準になっていること、アップルとグーグルが良い関係だった頃のMapや
Youtubeアプリの開発エピソードも意外なところだった。
一番笑ってしまった(でも怖かった)のは、やはり鉄板の
スティーブ・ジョブズのエピソード。
iPhoneの
Keynoteでアドレス帳のデモをする際に、トニー・ファデルを削除して、その後ファデルをクビにしたという…。
「どうせいつかは起きたであろう社内政治、すなわちトニー(・ファデル) の社外追放を一段と早める結果になりました。それは予告されていたのです。彼(ジョブズ) がデモのなかで、スワイプしてトニーを削除した場面を見たでしょう。デモの導入部で、〝連絡先〟の管理がいかに簡単かを見せた場面です。(連絡先を) スワイプ一つで削除する操作をしながら、〝何か不要なものがあれば、難しいことは何一つありません。ほらね、ただスワイプ一つでいいんです〟とかそんな感じでした。そこで削除された名前はトニー・ファデルでした。」
「僕は〝マジかよ……〟って思いました。開発プロジェクトに関わっていたアップル社員はみな〝なんてこった〟って感じでした。あれはメッセージだったんです。彼は要するに『トニーは出て行く』と告げたんです。なぜなら、リハーサルではトニーを削除などしなかったんですから。リハーサルの時は、そのたびに適当に選んだ別の人を削除してました」