幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

オッペンハイマー

www.youtube.com

おそらくオッペンハイマー知名度アメリカと日本とでは全く違うし、それはやはり原爆とその投下というものに対しての印象の違いそのものでもあると思う。

もちろんアメリカの中でもさまざまな見解があると思うけど、少なくともマンハッタン・プロジェクトをプロジェクトX的にみることは日本ではないだろう。

本作はアメリカでの公開当初日本でも物議を醸したので、このプロジェクトX的な面、そしてそれを成功させたオッペンハイマーの偉業を描いていて、負の面についてはある程度バランスをとる程度の描き方になっているのでは?と予想していた。

 

実際には、予想以上に負の面が描かれていた。映画を観るまで知らなかったが、オッペンハイマー自身がトルーマン大統領に「自分の手が血塗られているように感じる」と語るなど、核兵器に対しては恐れと危機感を持っていた。マンハッタン計画は物語の中心ではなく、オッペンハイマーアメリカ中から称賛を浴び、そのためにその後の苦難を背負うことになった出来事として描かれている。

ひょっとして本当に地球を破壊してしまうのではないか?という懸念もゼロではない状況下で行った実験までの長く葛藤もあった道のりと、それが成功してからの実使用までの軽さもまた怖い。

オッペンハイマー公職追放を受けるプロセスや、それを画策したストローズ(ロバート・ダウニー・Jrの演技も素晴らしい!)などの俗物を描くことで、核兵器を扱う人々がいかに未熟でエゴイストなのかという恐ろしさを浮かび上がらせている。

 

とても良い映画で3時間全くダレることもなく、オスカー独り勝ちにも納得した。