幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

アメリカの友人

読んだ本や映画で引用された別の本や音楽、映画、また映画の原作など、に興味を持って、それがきっかけで良いものに出会ったりするのは本当に幸せなことだ。 本作は思いがけないことから、意外に知らなかったことを発見して、トータルで楽しい体験となった。 起点は映画だった。ヴィム・ヴェンダース作品でブルーノ・ガンツも出ている。 色彩が印象的な映画は大好きで、本作も冒頭から青い絵、赤いフォルクスワーゲン、黄色いレインコート、赤茶色の建物、赤いベッドという場面が続き、それにカウボーイハットのデニス・ホッパー、髭のブルーノ・ガンツもいて、それだけでもう本作を気に入ってしまう。 以下、ネタバレあり。 ヨナタンブルーノ・ガンツ)が殺人を依頼されるも、それでもなんとなく牧歌的な展開になるのだろうという予想を裏切り、本当に一線を越えてしまう。やがてトム・リプリーデニス・ホッパー)との対照的な人生を超えた友情が芽生え、互いに助け合うようになる。両者が持つ義理堅さのようなものがうまく描かれていたと思う。 混乱したのはラスト。ヨナタンが笑いながらトムを置いてけぼりにするのも、こんなことに巻き込んだ友へのいたずらのように見えるので、まだわかる。が、ヨナタンの病状は本当は悪くなかったのに、なぜか死んでしまい、また意味ありげにダーワットが出てエンド・クレジットというところでよくわからなくなった。 これは原作を読んでみないと…となって、原作にあたってみたのだった。 原作を読むと色々と違っていて驚く。ヨナタンはドイツ人ではなくジョナサンというイギリス人だし、トムはカウボーイハットなどかぶってなくて、大富豪の令嬢の妻がいる。ジョナサンが死ぬ原因も病気ではなくトムをかばってのことだった。ジョナサンの妻のシモーヌもより物語に深く関係していて、ラスト近くでシモーヌがトムに唾を吐きかける部分も印象的だった。 結論としては映画は映画でまさにビジュアルを楽しめたし、原作もまた別の面があって面白かった。 で、一番驚いた発見が、このトム・リプリーの正体。なんと「太陽がいっぱい」でアラン・ドロンが演じたトム・リプリーだったのだ!つまり本作は原作では「太陽がいっぱい」の続編なのだ。そらカウボーイハットはかぶってるはずないないだろう(笑)。 作中に昔殺した友人の名前が出ても全然覚えてなかったが、まさに「太陽がいっぱい」で殺した大富豪の友人のことだった。 シャバでトムがこんな活躍(?)してるのだから、「太陽がいっぱい」のラストも映画と原作とで違うのだろう。こちらもさらに読んでみたくなった。