幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

エルヴィス

エルヴィス・プレスリーのことはそれなりに知っていたし、曲も有名なものは知っている。ただ、自分が好きなアーティスト達の憧れ的な存在という位置付けだったし(ジョン・レノンとの微妙な関係というのもあったけど)、あの衣装やパフォーマンスも、自分の世代的にはネタ的なものとして認識していた。

しかし本作を観て、エルヴィスってこんなにもカッコよかったのか、と驚いた。

ステージに登場する時のアクセサリの装着や、あの衣装を着るカットを、ジャケットを羽織る、袖をビシッと通す、など細かく並べながら徐々に盛り上げ、一気にドカンと登場し観客を意のままに盛り上げていく、というシークエンスにはワクワクさせられた。

黒人音楽に魅せられたエルヴィスの音楽へのこだわり、演技派の映画俳優になりたかったという夢などエルヴィスの純粋さがこの映画の一つの見どころだった。

これだけだと、よくある伝説の人の良い話で終わるのだが、もう一つの見どころが、トム・ハンクス演じる悪徳マネジャー、トム・パーカー大佐。エルヴィスの純粋さとまさに正反対で、ビジネス(お金)のことしか頭にない。

ただエルヴィスに向ける眼差しは果たして商品への執着だけだったのか?という点はトム・ハンクスの演技もあって単純には描かれていない。途中では、なんだか明日のジョーの矢吹丈丹下段平のような関係にも見えてしまう。

以下、ネタバレあり。

 

ただ、一人の人間のタレントに巨大ビジネスが依存してしまうという典型的な悲劇から逃れることはできない。これだけのエネルギーをぶつけたライブをやり続けること自体無理があったのかと思うし、一方で本人が観客からの愛を欲していたということであれば止めることも難しかったのかもしれない。

ラストで本当のエルヴィスの映像が出てくるあたりからは、もう涙が止まらない、という感じになってしまう。

今度、実際のライブ映像をみてみようと思った。