幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

三神万里子「パラサイト・ミドルの衝撃」

この本に興味を持つきっかけは、NHKの経済番組で著者をみてハートをわしづかみ(笑)されたことだった。 ただ、この「パラサイト・ミドル」という言葉がそれ以上に僕の心に刺さったことも確かだった。

45歳以上の中間管理職にとっての最適とは、組織内で波風を立てずに定年退職年齢まで安全に過ごすための環境づくりである。
傍観者として大企業にい続けることを通して中高年層は若手の成果に”パラサイト”している

この言葉自身は45歳以上のサラリーマンに向けられたものだが、そのしわ寄せがその下の世代にも及ぶとある。

幹部として経験を積む時期が遅れるということは、割り当てられる仕事の質量が経験年数に見合わないほどに希薄化し、個人にとっては遅々とした成長ペースを強要されることにつながる。

僕も何年か前、多くの人で責任を分け合うシステムの中で、人の仕事を奪ってまでリスクをとる勇気もなく淡々と年を重ねていきそうな危機感を持っていた(これをミドルクライシスというのかもしれないけど)。僕自身はうまい言葉がおもいつかなくて「永遠の企業内モラトリアム」と密かに名付けてた。 前半はこの「パラサイト・ミドル」への冷ややかな分析が続いており、読み応えがあった。若手(著者と同年代だろうか)の愚痴がそのまま文章になっているような部分もあるけど、それほど気にならない。 残念だったのは後半。流出組(95年に変化をいちはやく感じて企業を飛び出した若手)の「逆襲」という根拠が薄い。もちろんここに書いてあるような高い志でがんばっている人もいるのだろうけど、1人か2人の知人の話の紹介だけでは納得感が薄い。それなら歳を問わず、企業の内外を問わず、そういう人は他にもたくさんいるだろう。 パラサイト・ミドルに対しての助言も、情報処理能力を高めましょうというやや中途半端なものだ。あとがきでミドル層への配慮もしているあたり、まじめに、具体的に書こうとしすぎたのかもしれない。 前に読んだ「外資系キャリアの出世術」や「はじめての課長の教科書」などの本もあるが、どれが正しいとは言えず、生き方は人それぞれだと思う。