幻覚ギター

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HIGH OUTPUT MANAGEMENT

HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント"HARD THINGS"でも言及されていたアンディ・グローブの「インテル経営の秘密」。読もうと思ったら絶版になっていて残念な思いをしたのだが、新たな形で復刊された!

原著は1995年に書かれたもので、今となっては目新しいことが書いてあるわけではない。 それでも組織をつくって機能させることについては読み応えがある。 自分も含めて日本企業の、定型的な仕事(例えば製造)でない組織のミドル・マネジャーはここが弱いと感じるのだが、その理由は結局のところ人材の流動性の低さなのかなと思う。(採用ももちろん重要だけど、アンディ・グローブでさえギャンブルだと言ってる)

人が仕事をしていないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないのか、やろうとしないかのいずれかである。つまり、能力がないか、意欲がないかのいずれかである。どちらかを決めるのに、簡単なメンタル・テストを用いることができる。その仕事に生活がかかっているとすれば、それができるか。答えが「イエス」ということであれば、本人はやる気がないのである。答えが「ノー」であれば、これは能力がないということになる。

まさに自分もこの質問をしないといけない状況にぶち当たることばかりで、能力の問題であれば教育、やる気の問題であれば評価・異動などを通しての働きかけになるかと思うのだが、前者については高度な業務であるほど個人の資質の限界というのもあるし、後者ではミドル・マネジャーが使える手段は相当に限られている。 (徹底した訓練ということで広島カープのことは思い浮かぶけど、プロ野球の世界に身を置けるという時点で相当なモチベーションにはなるので一般的な企業とは比べようがない)

自分なりにここ2年余り、なんとなく組み上がっていた組織のパフォーマンスを上げようと苦闘した結果の結論としては凡庸だけど…(自分自身の能力というのも、もちろんあって、当然もっとうまくやれる人というのは世の中にいるとは思う)。

ところで、アンディ・グローブハンガリー出身の移民で、本書によると彼からするとアメリカ人でさえ曖昧にして議論を避ける傾向が強いらしい。日本人なんてどうなるのかと思うけど、彼の特異とされたマネージメントスタイルは移民による多様性がもたらすメリットだろう。 本書でもページを割いているミーティングについての教えを裏付けるエピソードが「インテル 世界で最も重要な会社の産業史」に出てくる。

もちろん会議の場で全員が対等と考えるのはかまわないし、誰かがノイスやグローブやムーアに盾突くのもいいだろう。だが会議の終わりにはきちんとした計画や行動プラン、出席者全員の任務をまとめておいたほうがいい。さもなければ大きなツケを払わなければならない。会議を招集したのに議論ばかりで結論が出ないということが続けば、たちまち責任者はアンディ・グローブからの呼び出しという世にも恐ろしい目に遭うことになる。