幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

ダン・アリエリー「予想どおりに不合理」

そもそも、この本を読もうとして「ファスト&スロー」の方が本格的でよさそう、となってそちらを読んで上巻でギブアップしたのだった(最近下巻も購入して再挑戦予定だけど)。 確かにこちらの方が「ファスト&スロー」のように似た話が延々続くこともなく、気軽に「なるほど」と思う体験ができる。 一番興味深かったのは社会規範と市場規範の話で、イスラエルの託児所で、子供の迎えに遅れてくる親に罰金を科すかどうかの調査結果。罰金を導入する前は親たちは社会規範をあてはめて、遅刻に対して罪悪感を持ち時間通りに迎えに来るよう心がけていた。ところが罰金を科したことで社会規範から市場規範へと切り替わってしまい、むしろ遅れることが増えてしまった。 さらに罰金を廃止したにも関わらず、一旦市場規範でとらえてしまったが為に、遅刻の回数は罰金導入前よりもわずかだが増えたという。 そしてビジネスの世界でも、企業が顧客と社会規範にもとづいた関係を構築しようとしているが(あたかも「よき隣人」という印象を植え付けるCMなど)、実際のところは市場規範にもとづかざるを得ず、それが露見した時には顧客は余計に不信感や不満を募らせてしまう。
結論? あなたが企業なら、ふた股はかけられないと肝に銘じることだ。あるときは顧客を家族のように扱い、一瞬後には、そのほうが便利だからとか利益があがるからという理由で、顧客を非個人として、さらには厄介者や競争相手であるかのように扱うわけにはいかない。社会的な関係とはそんなものではない。それでも社会的な関係を望むならそうすればいい。ただし、どんな状況のときもその関係を維持しなければならないことをお忘れなく。