幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

「思想としての〈新型コロナウイルス禍〉」

COVID-19によって世の中が変わるとしたら、どうなるのか、ということは仕事の上でも、自分の生活の上でも気になるところ。

ただ、ビジネス系メディアで読める実用的なものには飽きてしまったので、もう少し知的好奇心(笑)を刺激したくて違うものを読んでみた。

この「思想としての…」は悪く言えば発散したような内容で、でもまさしく求めていたものに近くて面白かった。印象に残った部分はいくつかあったけど、中でも木澤佐登志氏の「統治・功利・AI」はなるほどと思えた。

初め、世界は馴染みのある場所として登場する。やがて新しいイノベーションなり発見なりが大々的な影響をもたらして、その世界は永久に変わってしまう。これは、伝統的な「善vs悪」のストーリーとは根本的に違う。後者では、悪に対する勝利は物事が平常に戻ることを意味するから。大雑把に言うと、善玉が悪玉をやっつける物語は現状の維持がテーマであり、SFは現状の転覆がテーマだ。だからこそ、SFは潜在的に政治性を帯びている。SFは変化についての物語だから。

もう一冊の「コロナ後の世界」はジャレド・ダイアモンドポール・クルーグマンなど各分野の大御所たちの世界と日本の行末に関する考察。それぞれのものの見方の違う点が興味深かった。

自分の見方、というほどのものじゃないけど、人は一度手に入れた便利さや楽しさを手放すわけもなく、有効なワクチンが作られれば基本的には元に戻るだろうとは思っている。ただ、そこには今回の危機に対応するために生まれた、あるいは進化した、さらに便利なものたち(製品やサービスに限らず、制度も)が当たり前に存在しているという点が、それまでとは違う世界と言えるのかも。