幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

三島由紀夫「美しい星」

学生の時、友人の影響で三島由紀夫ばかり読んでいた時期があったが、この作品は最近まで知らなかった。

学生の時以来の三島作品なので、当時の印象と比べての感想だけど…。

 

読み始めて、これは真面目に書いたものなのか?とかなり戸惑った。自分たちが火星、木星、水星、金星から来たと信じている家族が地球を救おうとするのだが、UFOや核戦争で人類が滅びるということを信じる人々を嘲笑する意図で書かれたものだろうか?と。

ただ読み進めていくに連れて、人間とその世界を一つ上の立場から語るために宇宙人を登場させつつ、それらについて真剣に語っていると感じた。人類滅亡を願う、対立する宇宙人との対決シーンはとても印象的だった。(ウルトラセブンの「狙われた街」でのセブンとメトロン星人の対面シーンを思い出したり) 

思えば、純文学では人間や世界に対する作者の視点を浮かび上がらせるものの、これほど直接的に語ることはなく、逆にSF作品ではそういうものが多い。三島由紀夫がSFのそういった手法を借りてこんな作品を書いたという点がとても興味深かった。

COVID-19の影響が広がる中、それでもこれで人類が滅びると思っている人はあまりいない。ただ本書で書かれた当時の、核戦争による人類滅亡の懸念は他の危機も加わって今も続いていることは忘れるべきではない、とも思った。