良い映画だった。いわゆる、純粋に映画として評価することが難しい作品ではあるけど…。
以下、ネタバレあり。
主人公であるアブラハムのアルゼンチンからポーランドへのロード・ムービー的な展開で、その中でホロコーストの生き残りである彼の人生における喪失(妹と家や友人、足、娘などなど)と再生が描かれていく。
やはりラスト、ピオトレクとの再会は予期できていてもグッと来る。それだけに、ピオトレクや、一番心を通わせていたのに関係を断ち切ってしまった娘とのエピソードにもう少し時間をとっても良かったのでは?と思えた。
ちなみに娘の腕のタトゥーの意味が最初わからなかったのだが、ネットで調べてみると父・アブラハムへの思いから、自分で父と同じ(アブラハムは強制収容所で入れられた)ものを彫った、ということで、あの場面もっと引っ張ってもよかったのでは。
途中、パリからワルシャワへ向かうところでドイツ人の女性に会うのだが、そこでホロコーストで実際に見たことを彼女に話す場面は重たく、ドイツ人女性がホロコーストを理解したつもりでいることへの批判にもなっている。歴史の真実を検証し、語り継いで過ちを繰り返さないことは言うまでもなく重要なことだが、どうしてもこの部分は何かの感情として消費してしまうことが憚られて、映画として評価することが難しくなってしまう。