幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

ニール・スティーヴンスン「スノウ・クラッシュ」

本書がメタバースの語源だといっても(本書ではメタヴァース)、ニューロマンサー1984年)とかHabitatWikipediaによれば1985年開発、1990年から日本でサービス開始)とかより後で書かれた作品だろうし、元ネタはそれらの方なのでは?と思っていたので「なんぼのもんじゃい」という気分で読んだ(笑)

 

読んでみると、ニューロマンサーに比べてヴァーチャル空間、メタヴァースの描写がリアルで(システムや課金によるアバターの優劣とか、さまざまな制約など)、今世の中でイメージされるものにかなり近くて感心する。これが1992年という思ったよりも昔に書かれていたことも意外だった。

 

著者がハッカーでもあったという経験からプログラミングについての記述も納得して読める。他にも「情報」そのものがお金になる(CICデータベースにアップロードすれば、その価値を認めた客が金を払う)というのは、正確には情報そのものにお金を払うよりはそれにつく広告収入という形が主流だけど、現在のインターネットの姿に近いし、国家が弱体化してコングロマリットフランチャイズ)が世の中の秩序を作っているという設定もおもしろい(こちらは昔から言われていたが)。

その舞台に人間の脳神経に取り憑くウィルス、それも人類の進化にも影響を与えたウィルスの存在という大胆な設定まで取り入れて、まさに古き良き時代の、サイバーとドラッグの融合という感じでとても良かった。神経言語ハッカーという言葉だけでもワクワクする(実際、ティモシー・リアリーが本書を絶賛していた!)。

ただ、小説として読むと展開が無理矢理なところとか、途中テンポが落ちて読むのがしんどいところもあって、映像化したらもっとよくなるのかもしれない。

 

ちなみに著者はHabitatのことは知らず、メタヴァースの描写ではアップルのヒューマン・インタフェース・ガイドラインを参考にしたとのことで、これもまたあの時代らしくて懐かしい!