幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

「ザ・ビートルズ 解散の真実」

ザ・ビートルズ 解散の真実これが現実ということか。それでもおもしろかったし、読んでよかった。 オノ・ヨーコがメンバー間に緊張感をもちこみ、その後のさらなる対立からザ・ビートルズ崩壊へとつながっていくことはドキュメンタリーなどで知っていたが、具体的なやりとりや訴訟合戦などについて詳細に書かれた本書を読み、現実はそれよりももっと醜悪だったことがよくわかった。 どんなに才能があろうと、成功しようと、人間であることからは誰も逃れられず、さらに(失態も含めた)一挙手一投足が世界中から注目され、記録・公開される立場というのは相当にタフだということも生々しく想像できる。 ただ著者はあとがきを読むとジョン、ジョージのファンのようで、ポールとオノ・ヨーコに対する描写はやはりその分悪意が強くなってないか?とは思う。もちろんジョン、ジョージ、リンゴのダメ人間ぶりも相当に書かれてるし、書かれてあることは事実だとは思うけど…。 ポールについては芝居やインタビューがぎこちないことが何度も描かれる。
(ポールは)見事なまでにぎこちないスタイルでオノと抱き合った〜エクスタシーに達したように顔をのけぞらせる彼女を、まるでクロコダイルを抱こうとしているかのように、彼がおそるおそる抱き留めたのである。
またオノ・ヨーコについては関係者(ミック・ジャガーまで)の証言を引きながら、やはりジョンを変にしてしまい、ビートルズを壊した女性として描かれている(日本人として申し訳なくなるほど)。
優雅さと気品を持ってふるまっているふうを装いながら、マッカートニーを苛立たせる才を、彼女はいささかも失っていなかった。
結局のところこんな本を読むよりも彼らの音楽を聴いてその素晴らしさを感じればよいのだ、という身も蓋もない結びには完全に同意。
音楽に神話化は必要ない。それは時間を超越すると同時に、その音楽が登場した時代の、驚くほど正確なドキュメントとなっている。(中略)つまるところは、それを作り出した男たち、あるいは彼らがその周辺に築いた帝国以上に素晴らしいものなのだ。 ビートルズの魂はアップル・コア社の重役用会議室や、四人の億万長者の銀行口座ではなく、彼らの曲が持つ、本能的で自然な優雅さの中にこそ存在する。四人の天才が合わさると、金ですら壊せないものが生まれたのだ。