「これからの『正義』の話をしよう」も、ちょっと難解だった「民主政の不満―公共哲学を求めるアメリカ」も読んだはずだけど、ブログに感想を書いてなかったみたい…。
先の2冊では、マイケル・サンデル自身の主張が、どこか掴みきれなかったが、本書では意外なまでにストレートに、際限なき市場化を批判する立場を明確にしていて読みやすかった。
この三〇年のあいだに起こった決定的な変化は、強欲の高まりではなかった。そうではなく、市場と市場価値が、それらがなじまない生活領域へと拡大したことだったのだ。こうした状況に対処するには、強欲さをののしるだけではすまない。この社会において市場が演じる役割を考え直す必要がある。市場をあるべき場所にとどめておくことの意味について、公に議論する必要がある。この議論のために、市場の道徳的限界を考え抜く必要がある。お金で買うべきではないものが存在するかどうかを問う必要がある。
実際にこんなものまで?と思うものがすでにお金になっていることに、驚くばかり。MLBで選手がホームに生還するたびに、保険会社の宣伝文句を実況アナウンサーが言わなければならない契約だとか、バッターが打席に入って足場を掘るときには掘削工事会社の宣伝文句を言うとか。
幸い日本ではまだ冗談で済んでいるが、そこまで行ってしまうのだろうか。