幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

「時間は存在しない」

かなり身構えて読んだのだが、数式はほぼ使われず、思ったよりもやさしかった。

おかげで、「時間」が持つ不思議さや、著者が考えるモデルについては何となく理解できた。

タイトルはセンセーショナルだが、実際には絶対的・広大な宇宙全体に普遍的な時間というのは存在せず、我々が感じている時間というのは、我々がたまたま属している小さな特殊な系の中のもので成立しているもので、それさえも我々は正確に理解しているものではない、という。

この世界そのものと自分たちがそこに見ているものとのほんとうの関係は、じつはほとんどわかっていない。自分たちに見えているのがほんのわずかであることはわかっている。かろうじて、物体が発する電磁波の広範なスペクトルの中のたった一つのちっぽけな窓を覗くぐらいで、物質の原子の構造も、空間が曲がっている様子も見えない。わたしたちは矛盾のない世界を見ているが、それは自分たちと宇宙との相互作用を基に推定したものであって、わたしたちの途方もなく愚かな脳にも処理できるように、過度に単純化した言葉でまとめられたものなのだ。