幻覚ギター

みた映画、きいた音楽、よんだ本。

堺屋太一「組織の盛衰」

前半は特に、組織のそもそもの目的やそれを果たすための構造(共同体組織と機能組織など)やトップ以下の主要ポジション(部門長、参謀、補佐役)と役割、さらに陥りやすい問題点などが、教科書的に整理されていて参考になった。

後半は、本書が発刊された1993年に議論されていた社会の変化や、バブル崩壊に苦しむ日本企業の組織のあるべき姿や、将来の組織像について考察が展開されている。

属人化を排するためのこれまでの組織から、デザイナーやソフトウエアプログラマーが中心となれば、むしろ属人的組織(ジャズバンド型)になるのでは?という考察は興味深かった。フリーランスが複数の緩やかなプロジェクトチームに参画して働くことは、後に一般化したインターネットを背景に珍しくなくなった。一方で、巨大IT企業は最初はめちゃくちゃ属人的な組織から始まったが、持続可能性を追求する中で従来型の企業と同じく属人性を排し、カリスマ創業者が去っても次の人(もちろんスーパースターではあるけど)が出てくるような仕組みが作られている。

また、対面による情報伝達が現在の組織のヒエラルキーを支えてきたが、コンピュータによる情報伝達によりアドホックなつながりを持つ組織になっていくと予想しているが、これも必ずしもそうなっていないところが面白い。大きな組織になればなるほど、メールといえども情報そのものよりも、誰が発信したかが結局重要になっていて、それは組織ヒエラルキーそのものだったりする。

最後に、ただ売上や利益を他社・自社の過去と比べて上げ続けていくには限界があり、これからは利益の中身が重要であるという「利益質」を重視すべき、という主張と、当時から通産省で取り組んでいた「ヒューマンウェア」(対人技術)について述べられる。このあたりは、当時まだ具体的なイメージが共有されていなかったためか、あまりに大きく漠然とした話で終わってしまっているが、株主資本主義からステークホルダー資本主義へという主張やSDGsなど、一部具体化されている。

そんなこんなと考えながら読むのは楽しかった。